販売とお金

それは耳にタコができるくらいに散々聞かされていた。
そんなに長い期間かかるとは思いもしなかった。
実際やってみるとやはりそうらしい。
自分の体で体験しているのだからまず間違いはない。

零細が新事業立ち上げようやく起動するまでの期間。
それは約10年。そう周りから教えられて来た。

10年といえば長い。この状況がめまぐるしく変化する昨今。
スピードを一番に対応しないと取り残される現代。
それでも10年というのか。
この数字にはいつも頭をかしげていたのは事実だ。
しかし、実際はというと。やはりそうらしいのだ。

この10年の中味も重要だろう。いやそれこそが最も大切な点だ。
開発しそれを作りそして売る。
その工程は単純だ。ただ、根底にはこれで世の中を変えるんだ。
これで儲けてやるんだ。これで世界へ羽ばたくんだ。
思いがある。考えがある。それに基づいて開発する訳だ。
しかし、果たして本当にそうだろうか。
自分の場合はそうではなかった。ただ自分のためだ。
自分の飯が食えるために。つまり会社がお陀仏にならないために。

例え零細とて従業員はいる。給料は払わねばならない。
自分にもお金はいる。最も大きなものは会社の借金だ。
借金を返しながらも給料は払わねばならずその上税金も払う。

儲けなければらぬ。稼がねば会社は即座にお陀仏だ。それが根底にある。
当たり前だ。

お陀仏にならぬよう開発し作りそして売る。
その開発し作るものが、この世になければ新事業だし新しいことをやらねば新事業とは言えない。

SHTS Dryer。開発開始して約8年が経過する。
今でさえKENKI SHTS Dryerという名称を使っているが、この名前もごく最近ついた。
ひょんなことから始まったこの乾燥機の開発。
さまざまな姿かたちを経て今の姿がある。
開発当時からすると全く別物でありこういう姿かたちになるとは想像だにできなかった。
今後もどう変化するかなんて判ったものではないし変化し続けないと新開発とは言えない。

新事業立ち上げで最も苦労するのは実は売ることだ。
実績がない。ブランドがない。会社が小さく本当に大丈夫か。
相手の見る目はいつも厳しく冷たい。
逆の立場であれば当然だし理解できる。しかしこれがかなりきつい。

会社の説明から始まり商品の説明をする。
当然それだけで信用される訳もなく実物を見せる。
そして実際にテスト機でテストを行い目の前で証明する。
それでもわかってもらえるかとかと言うと難しい面がある。
それでは足りないものはなにか。実績でありブランドだ。
良いもの、素晴らしいものが売れるとは限らない。
売り方がある。それは要求されるものにいかに答えるかにある。
何を書いているかというと、もちろん誰しもが要求にこたえるべく必死に答える訳だが。

その答え方だ。そしてどうアピールするかもある。
どれだけ相手をうならせるかにありそれは何も技術的素晴らしさだけではない。
ただ根底には斬新的な技術は必要だが。
それをいかにわかりやすく相手に納得できるようなアピールができるかによる。
そのアピールする内容はその相手に合わせる事も必要となる。

確かに作る側にとって売ることは難しいし面倒くさい。
しかし売ることができなければ売れないし会社はお陀仏だ。
実は、作る開発より売る開発の方が難しく重要なようだ。

うちはもちろん製造業に属し作る開発は常に行っている。
しかし、売る開発も実は行ってきた。
この8年の歳月の中には作るのみだけではなく売る開発を行ってきたつもりだ。
これはつもりでありはたから見ると売る開発などと言えたものではないかも知れない。

だらだらと文章を連ねてしまった。
今回何を書きたいかというとその売る側の状況が最近変化し始めた。

一つが海外。EUフランスにメンテナンスができる DISTRIBUTORが1件。そしてAGENTが1件。開設できた。
そして国内。KENKI SHTS Dryerを全国販売網で売ってくれる大手さんが現れた。

実は次も狙っている。何を狙っているかというと他の海外の販売網の構築だ。
現在JETROに海外輸出有望案件に採択されていることもあり積極的に海外展開を図っている。

続きがある。結論の続きがある。本当はこれを書きたくこれを書くのが今エントリーの目的なのだ。
それはお金がない。交通費、宿泊費もろもろと販売展開をするうえで先行投資のお金が必要だ。
また、新たに新しいテスト機も作らねばならない。
他にもEU輸出のためのCEマーキングも取得せねばならない。
とにかくお金がいる。それも即座に。すぐに。
お金を貸してくれ。一刻も早く大金を。
と言うことで先生にアドバイスいただきながら融資枠を広げるべく県へ申請を出した。

ところがだ。内容不十分ということで書き直しの命令を受けている。
時間がない。考えればこれを書いている時間さえ勿体ない。
一刻も早く申請書を完成させねば。

これでおしまい。それでは股です。