3月27日。ご来社。

怒鳴りこんで来やがった。俺がいるとは知らなかったのだろう。
俺以外の誰に頼み込むつもりでもいたのか。
そうや問屋が卸すもんか。正直に今の状態を説明する。
ひと言も分かったとは言っていない。答えは検討すると言う言葉だけだ。

どこもこのご時世厳しいのは分かる。だが、納得できる内容ではない。
うちが終われば自分のところも一巻の終わりだろう。

こちらは決して頷かず了解など一切しなかった。いや出来るはずもない。
そんなやわな人間ではない。どれほど交渉たるものを経験してきたか。
目だけは輝かせ一切口を開かない。他の話に持って行く。
ひたすら問い掛ける。

あきらめたのか。帰って行った。来る者は拒まない。何度でもいらっしゃい。
脅されようが顔色一つ変える事はないだろう。
これまでの経験が物を言う。散々蔑まれた過去の鬱積が俺の体を鍛えた。
感情的になれば負けだ。相手の感情にはひたすら訴える。
自分の心は常に冷静だ。ただひたすら相手の心の叫びに訴えかける。


閑話休題

引き合いが多い乾燥機。更なる進化を遂げ他社を出し抜かねばならない。
本日の打ち合わせで大学の先生のアドバイスに従う事に。
この先生は大手民間事業出身で技術屋で自分の身で実機での経験が豊富。
今後徹底的に改良を加えるつもりだ。
更に安価にそしてコンパクトに。
乾燥機開発後7年の月日が経過している。売れなきゃなんにもならない。
機械物は納入後もなにかと面倒が起きる。
それもクリアしないといけない。一か八かが最も怖い。

だがお金がかかる。開発、改良にはお金がいる。そのためには稼がなくてはならない。
今国家は自由経済国日本だ。何も日本国だけでない。お金稼ぎが出来なきゃ飯が食えない。
万国共通でありそれだからこそ全世界が競争相手だ。
目下のところ中国だろう。手元にある中国企業のカタログを眺めるとまさしく日本製の乾燥機の模倣品。
安く作り全世界へ供給する。それに打ち勝つにはどうするか。
勝ち負けではない方法もある。それこそ戦略なるものが必要だ。

海外。最も大切な事は交渉力なのでは。

いずれ海外からも怒鳴りこんで来るだろうか。



それでは股です。

1)失敗:まだまだ拙い交渉力。
2)感動:先生でさえ切羽詰まっているのでは。
3)目標:世界一。